「はっぴいえんどが好き。」

彼女はそう言って、姿を消した。
不透明なクモの巣。
薄っぺらくて、哀しくて、捻じ曲がっていて。

君のことは顔も、名前も、姿も形も、知らないけど。
君のことは性別も、住んでる場所も、ポケットに何が入っているかさえ、知らないけど。
君のことは年齢も、好きな食べ物も、誰を愛して誰を憎んでいるかなんて、知らないけど。

僕はTSUTAYAでそいつを借りて、ボロっちいヘッドフォンで聴いたんだ。

すっと、窓に目が移った。

あの娘も、きっと日本のどこかで、この曲を聴いているんだろう。

今、すこしだけ君を理解できた気がする。